2017/04/17

Animals of the North


現在、レコーディングを重ねながら次回の作品となる音楽を試行錯誤の構築中、やっとだいたいの姿形が見えてきて、制作方法も固まってきました。ここまで来るのに、のりしろ部分含めて6年はかかっているな…千里の道も一歩から、完成までにどれくらいの時間がかかるかあらかじめ知ってたらやりたくなくなるってものですね。まあ普通はこんなに時間をかけるヒマな人はあまりいないと思います…いやいるかな?私はとんでもなくノロノロ作っているだけなのです。誰にも急かされないばかりか、むしろ「ゆっくり作りたまえ」と言われる事しかないので、さらに遅さに磨きがかかります。娘も小さい事だし。

遅い事にはそれなりにいい事もあるのですが、今は早く完成させたい!…というのは、心が少しずつさらに次の作品のテーマに向かっているからです。この、心に未来を感じる次なるテーマが浮かんだ時こそが、一番楽しい。

テーマについて。それは、かなり雑な言い方をすると「動物の移動」です。わくわくするでしょう(しない?)。特にカリブーの移動に惹かれていて、これはもうずばり星野道夫さんの影響です。音楽家としてこのテーマをどう形にするか、考えるだけでもゾクゾクします。(しない?)…とはいえ目ぼしい手がかりはありません。ひとまず極北の動物に関する本を読んだり、そういう記事を集めたりしています。

「低く唸るようなカリブーの鳴き声が聞こえてきた。
カチカチカチカチと奇妙な足音も近づいてきた。
それはカリブーの足首の腱の鳴る音だった。
私たちは河原に伏せながら、そのかすかな音に耳をすませていた。
不思議な足音はどんどんと迫り、
カリブーは一列となって私たちのすぐ隣を通り過ぎていった。
自然の気配を何一つ乱さなかった快感があった。
私たちの姿だけが消え、
人間のいない世界に流れる秘かな自然のリズムを垣間見たような気がしていた」

星野道夫

この文章に全てが詰まっています。やっぱりもう、音楽にする必要ないや。

そういうわけで、今現在制作中の作品も、今年中か来年半ばまでには手を離れるかなと思っています。そう、私の中の「早い」は1年後なのです。